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DATE: 2013/05/17(金)   CATEGORY: 上演記録
ブラック演劇のあと味
(『動機xデモ隊+4』パンフレット原稿)

ブラック演劇のあと味 ~格差社会へ捧げるフォワシィのアイロニー~
演出・山崎哲史

本日はご来場ありがとうございます。

まず、このたびギィ・フォワシィ氏が、昨年このシアターXで上演されました作品『エリゼ・ビスマルクの長い人生』で、フランス著作権協会の戯曲賞を受賞されることとなりました事を、皆様にご報告させていただくとともに、お祝い申し上げたいと思います。この御歳81歳にしてなお、新作を発表する現役のフランス人劇作家による、エスプリ感あふれるブラックなユーモアの世界は、私たち現代日本人の社会とっても、痛烈なアイロニーとなるものです。今回もフォワシィ作品を再度演出させていただく機会をいただきましたことを嬉しく思います。

さて、今回の公演は、「格差ある社会」を背景にした新旧2作品を中心に上演させていただきます。『動機』(1970年)では、当時の恵まれた市民階級としての大ブルジョワの斜陽ノスタルジーを、『デモ隊』(2012年)では、その後経済力によって成りえた現代的プチ・ブルジョワの本音を、それぞれシニカルに描きます。また、近年(2011年)に出版された4作のコント(=フランス語で短編演劇)を、この『デモ隊』の登場人物のサブストーリーとして構成する悪戯な試みをさせていただきました。

『動機』は、約40年前に書かれたフォワシィの代表作の一つです。ブルジョワのマダムと、プロレタリアートの若妻という、住む世界が違う二人によるかみ合わない会話が、張り詰めた緊張感のなかで展開していきます。この当時から、プルーストの小説等やフランス映画においても、なにかと揶揄されることの多かったブルジョワジーの面々ですが、この作品では、ただ世間知らずで滑稽な裕福な市民というだけではなく、マダムが妖しい犯罪に至る「動機」の中にある苦悩を通して、「人間らしく生きること」についての羨望と追求を感じることが出来ます。フランスは自由と人権の尊重、そして格差社会の大先輩といえるかもしれません。
この『動機』は、これまで内外で多くの上演がなされてきました。私もこの同じ劇場シアターXで2年前に演出し、ブルジョワマダムはNLTの泉関奈津子さと民藝の石巻美香さんのダブルキャストで、個性的なすばらしいソフィア像で、公演はご好評をいただきました。今回は、その時は若妻ソフィを演じたいずみひなさんをマダムとして、林裕子さんをソフィに迎えての再演となります。同じ演出の再演のはずが、創作の過程では日々新しい発見があり、また全く違う新しいソフィア・ソフィの関係を、お見せできるのではないかと思います。
 
『デモ隊』は、2012年の新作です。ちょうど日本でも金曜日の首相官邸前デモが話題になっていたときに初読させていただき、すわ、時事に合っているのではと感じたものです。確かに日本でも近年「格差社会」と言われ、いわゆる「勝ち組」と「負け組」の格差が広がり、一億総中流と言われた穏やかな身分関係のなかにも、見えない壁を感じ始めている気がします。しかし、そもそも私たち日本人は「持つ側」なのか「デモする側」なのかと考えた時、世界的にみれば間違いなく豊かで恵まれていることを認識すべきなのだろうと思います。つまり、世界というソサエティと近代史の中においては、経済的成功を礎にした「プチ・ブルジョワ」の的存在なのではないかと思うのです。
ギィ・フォワシィの作品の登場人物は、英雄や権力者よりも、小さく生きている普通の市民であることが多いのです。そして、その小さな市民は彼のブラックの標的でもあり、「大衆こそモンスター」というテーマは、多くの作品に見ることが出来ます。
この『デモ隊』は、そのカテゴリーの作品ではないかと捉え、この高級アパルトマン住み、この日の隣地の暴動に怯えている善良な市民たちには、世界のプチ・ブルジョワであるところの、一般的日本人の姿がオーバラップして見えてくるのです。一昨年の大震災と原発の惨事、昨年からの「金曜デモ」の行方、それからのメディア報道と市民の暮らしぶりに感じる、日本人の「忘却の天才ぶり」は、どこかで警鐘を鳴らし続けておかなければならないのではないかと思います。

今回デモ隊で、女優陣が演じるのは、同じ「カロリーヌ」という名前の設定です。「この歳はカロリーヌが多かった」というセリフから、私の世代ではわが国でも「美智子さん」が多かった世代があったことを思い出しますが、ちなみに、モナコのグレース王妃の最初のお子さんが「カロリーヌ」公女で、1957年生まれです。今回はそちらの本物?よりは少しお若い設定ですけれども、同じ歳生まれとなっています。清水由紀さん演じるカロリーヌは、もっとも古典的な上品な本物のブルジョワに近い女性。つまり世間知らずで、いまでいうところのちょっと天然。SCOTから第三エロチカという経歴の坂本容志枝さんは、抜群の身体性を活かした個性的で迫力あるカロリーヌ夫人ですが、ちょっと過去に影もある設定です。絶妙の間と語り口の松永麻里さん演じるカロリーヌは、軍隊の家系に育ったウーマン・リブ活動家風の、ジェンダーフリー論者です。最後に登場する森下知香さんが挑むカロリーヌは、正体不明で、いちばん「成りあがり」感と階級コンプレックスを感じさせます。成り金の夫と、自分の愛人を同居させている「現代的」自称する自由人です。
それぞれの、奥様の伴侶は、とても個性的な男優陣もご紹介しておきます。俳優座の神山寛さんとはやっと念願叶ってご一緒することができました。初めてご一緒するベテラン俳優の西田圭さんは演歌歌手でもあります。「フォーラムシアター・ジャパン」の同志である山谷勝巳さんと柳鶴英雄さんは、2年前の「ブラック3作」にも出演していただいた気心の知れた力強い仲間です。旧知の五位野隆雄さんはフォワシィには三度目のご出演です。
今回上演する短編コントの一つ『最初の読書』のセリフにもありますけれども、これらの俳優の皆さんがそれぞれ演じる登場人物は、ギィ・フォワシィが書いた意地悪な「運命」から逃れられないのです。今日まで、ご一緒して創作の苦労を積み上げていただいたことに敬意を表します。

最後に、「劇場」はメディアのひとつです。そして劇場というメディアは、遠慮なくタブーを扱、社会の本音に接触することができるところに、一つの特徴があります。フォワシィのブラック演劇はその手段としてもっとも知的な問いかけを残してくれるものです。「深刻さを笑い飛ばす」これがブラックユーモアの醍醐味です。現代社会を生き抜いていくことは、さまざまな困難の連続でもあります。マスメディアが作る娯楽の、痛快なストーリーや、美しいハッピーエンドのドラマでストレス解消をして頂くことも良いですけれども、叶うことのない夢物語のカタルシスだけでは、厳しい現実に生きている恐怖を軽減できるものではありません。
『動機』『デモ隊』には、さまざまな人間の暗点を晒し、目立たぬように生きている大衆の痛点を突きます。たまには劇場で「あと味」の残る娯楽芸術をお楽しみください。本音で語った苦味の後は、すこし日常の生活社会が甘く優しくみえていただければ幸いです。
“Castigat Ridendo Mores”(彼は風俗を嘲笑することによってそれを矯正する)
パリのオペラ・コミック座に掲げられている碑銘です。つまり、ブラック演劇演劇とは「ひとのふりみてわがふりなおせ」ということでしょうか。        (了)

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