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DATE: 2014/12/06(土)   CATEGORY: 上演記録
アンナとグルシェと大岡越前
「グルシェ」 パンフレット原稿
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本日はご多忙な月末にもかかわらず、ご来場ありがとうございます。
ご観劇のお目汚しとなりますが、このたび上演させていただきます『グルシェ』という作品のご紹介をさせていただきます。長文となります事をお許しいただきたく存じます。

この作品の原作者は、ベルトルト・ブレヒト(1898-1956)というドイツの演劇家で、一般の方にはお馴染は薄いかと思いますが、近代の演劇界に於いては革命的な存在として世界中に影響を与えた人物です。日本の近代演劇の第一人者である演出家の故・千田是也先生もその一人であり、日本でもブレヒトの演劇論や多くの戯曲が紹介されることになりました。
その千田先生門下でブレヒトの演劇哲学に触れて来られた大先輩方が1989年秋に発足されたのが「フォーラム・コイナさんの会」であり、“コイナさん”の名称も、ブレヒトの作品に由来するものです。そして今年の公演に際しまして、久しぶりに原点に触れてみようと、ブレヒト作品に挑むことを決めました。私としては身の程知らずで無謀な企みですけれども、本家本元ならではの沢山のお知恵をお借り出来る機会、と捉え取り組ませていただくことになりました。

そこで最初に構想しましたのは、ブレヒトの有名作である『肝っ玉母さんとその子供たち』と、『コーカサスの白墨の輪』を翻案させていただくもので、その両方の主人公が人生を絡め合う「アンナとグルシェ」というプロットからスタートしました。幌荷車を引き戦地を廻る戦争商人の母・アンナと、領主の乳飲み子を抱えて悪戦苦闘する女中娘・グルシェのお話でしたが、検討を重ねた末、その構図を残しつつ『コーカサスの白墨の輪』に絞ったお話として今回の『グルシェ』が出来あがりました。

ブレヒトの「異化効果」的の手法として、狂言回しの役割で登場するのは、『肝っ玉~』の主人公のアンナを思わせる女性です。彼女がグルシェの活躍を語る構図です。

余談ですが、劇中で“アンナ”と呼ばれることも名乗ることもないのですけれども、この役名は“アンナ”と台本には書かれています。全編で何度も「アンナ」「アンナ」・・と書かれた上演台本が出来あがりましたその日に、女優・中川安奈さんの訃報が届きました。享年49歳。(千田是也先生は祖父 )親交あるメンバーにとっては、寂しい初回読み合わせで始まることとなりました。あらためましてご冥福をお祈り申し上げます。

 さて、本編ですけれども、原作の『コーカサスの白墨の輪』は1944年に書かれた作品です。ストーリーの着想は、中国の古典『灰欄記』(かいらんき)からのもので、日本の時代劇・大岡越前のお裁きと同じく、子の親権を「生みの親」と「育ての親」で争い、子を奪い合う力比べの中で、より思いやりを持っていたほうに親権を与えたという裁判のお話、ということになります。
 ここに副題として「法と裁判」ということも出てきます。法律は何のためにあるのか、誰が誰のためにどう適用するのかを考えさせられる、人治国家(=法治国家の対義語として、そのときの権力者が都合よく法律を解釈して運用する社会)の有様の提示でもあります。本作ではその役割を果たすが「アツダク」という、とても尊敬できない人物による判決です。そしてこの部分が、「勧善懲悪」の痛快時代劇との違いでもあるのです。

本作『グルシェ』は、2014年にこの日本で翻案された作品です。(=なお、俳優陣で研究の本読みをしたものは、勿論代表的ドイツ文学者の故・岩淵達治先生の翻訳です。岩淵先生は過去にコイナさんの会での演出もされています。)原作や西洋の童話に見られるような、善・悪など「二極化」して二者択一を求めるものではなく、その間に「落とし所」を見つける、日本人らしい判決に導かれます。したがって、登場人物も徹頭徹尾の悪人もいなければ、完全無欠の主人公もいません。

「大岡裁き」がお馴染の日本人にとっては、生みの親よりも育ての親が優先であるべきで、しかも育て親は心が優しくて美しい、という先入観をもってしまいます。しかし本作『グルシェ』では、血縁の親(ナテラ)は、しっかり子は愛していて、裕福な身分であり、育ての親(グルシェ)は、真摯とはいえ世間知らず、育てたのも物心つくまでの2年間だけ、しかも新婚という環境です。

 しかしグルシェには親権を主張するもう一つの大事な価値観があります。そこにも一つの争点「金や権力は子供を幸せするかどうか」ということも浮き上がってくるのですが、果たして、この子供のために最良の選択はどうなのか、“ダメ人間”裁判官のアツダクの判決とともに、本日お芝居をご覧いただいた皆さまにも、ご一考いただければ幸いです。

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